こんにちは!
高島のアパートに移住するとき、下見した部屋からは軍艦島が見えたのに、実際は軍艦島が見えない部屋に入居した高島地区地域おこし協力隊のてくてくです!
今回は皆さんご存知の軍艦島で行なわれている、あまり一般に知られていない調査や研究の内容についてご紹介します。
ながさーち編集長とカメラマンさん、そして私の3人で、東京都市大学・静岡大学・大阪大学の合同チームによる実地調査に同行させていただきました。
通常の観光ルートでは入れない場所で、どのような調査が進んでいるのでしょうか?
クルーズ船に乗る前にぜひ読んでいただきたいと思います。
世界でも軍艦島だけ!?研究者が求める貴重な情報
軍艦島といえば、廃墟というイメージをもつ人も多いはず。
しかし研究者にとっては「過酷な環境下に長期間さらされた建造物が、ほとんど人の手を加えない状態で保管されている島」であり、他では収集できない貴重なサンプルデータが山のように眠っている夢のような島なのです。
青い空と海に浮かぶ廃墟は、とても美しく幻想的。
ひょっこりひょうたん島のように、僕らを乗せて動き出したりはしないものだろうか。
そんなことを思いながら、調査隊の拠点となっている小中学校の中へ。
一般に立ち入りを禁止しているエリアのため、市職員の同伴・ヘルメットの着用を条件に特別な許可をいただいての撮影となります。
この日は特別示し合わせたわけでもないのに、カメラマンも含めて全員が黒の半袖シャツという出で立ちでした。
ながさーち組はさらに全員ジーンズというオマケつき(笑)
やはり軍艦島、ここには何か奇跡的なことを引き寄せるパワーがあるようです。
センサーを取りつけ、劣化した建物の揺れをチェック
上写真中央に写っている電源ケーブルを辿っていくと、建物内部に設置されたセンサーが見つかります。
これは「加速度計」というセンサーの一種で、振動を感知することができるものだそう。
このセンサーが拾ったデータは大学のコンピュータへ送信され、主に建築関係のサンプルデータとして使用されている模様。
天候等の外部要因が建造物に与える影響や被害を建造物の状態と照らし合わせて作られたデータは、きっと新たな素材・工法の開発に役立つのだろうと思います。
ちなみに人がそばを歩いたときやセンサーに触れたときの振動は、受け先のコンピュータで選別してはじくそうです。
センサーは日本航空電子工業製とのお話でした。
小中学校の上層階にあるセンサー。
設置後に天井の崩落があり、電源ケーブルが瓦礫の下敷きに。
センサーのデータからどこまで読み取れるものなのかはわかりませんが、おそらく音や衝撃による振動を感知することで崩落の程度やおおよその場所を推測することができるのでしょう。
このときのデータはどのように記録されていたのか、気になります。
軍艦島には当然電気が通っていないため、太陽光パネルによる自家発電が行なわれています。
現在、建物の屋上に計5箇所設置されているとのこと。
センサー・カメラ・データ送信機器への供給は全て太陽光発電による電力でまかなわれているのです。
小さい島なのに、そこらじゅうに調査機器が点在している
こちらは常設してある調査機器で、雨風による飛沫の塩分濃度をチェックする装置。
毎月末に中のボトルに溜まった水分を長崎市が回収しています。
塩害調査を主とするものには、他にもコンクリートブロックの曝露(ばくろ)試験があり、写真の中央より少し右側にある立方体が並んでいるものがそれに当たります。
日本コンクリート工学会によるもので、予め傷をつけたコンクリートブロックの素材別劣化調査を行なっているそう。
亀裂の大きさを調べるための目盛りも設置されています。
建物だけでなく、護岸の亀裂も年々広がっていると市の担当者が仰っていました。
50年後には瓦礫島になるといわれる軍艦島ですが、やはり崩壊は免れないのでしょうか…?
諸行無常という言葉の意味を目の当たりにしている気分になります。
日本最古の鉄筋コンクリート製アパートである30号棟を撮影している定点カメラ。
取材に同行させていただいたこの日は、起動しなくなってしまったこちらのカメラの復旧作業をメインに行なっていたのでした。
写真右が任務の責任者である大阪大学で情報ネットワークを専攻されている、猿渡俊介准教授。
実際に作業されているのは学生さん。
教授はとても人当たりの良い方で、作業中にも関わらず今回の記事でご紹介した、大学チームが現在行なっている調査についてのお話をわかりやすく解説してくださいました。
この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。
30号棟を捉えた映像は、他にもある定点カメラの映像と一緒に7月にリニューアルした野母崎の軍艦島資料館へ飛ばしてライブ配信を行なっているそうです。
端島神社の跡地を映したカメラもあり、取材当日には写真を撮りまくってはしゃぐ僕たちがライブ配信されていたのかと思うと少し申し訳ない気持ちになります。
恋ダンスでも踊ればよかった。
今回は軍艦島で行なわれている調査について、簡単にご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?
あまり知られていない調査や研究が、実は皆さんの身近なものに応用されているのかもしれませんね。
今回の大学合同チームによる調査は文部科学省の助成金によるものと聞きましたが、善意の寄付だったり長崎県や長崎市の税金を使って行なっている調査もあります。
長崎県下の情報を発信する「ながさーち」のライターとして、長崎民はもちろんのこと、できるだけ多くの皆様へ公金事業としての端島調査情報を届けられるようにしていきたいと思います。
端島調査に関しては、ご要望があれば続編も検討しています。
もっと知りたい!という方がいらっしゃいましたら、コメント欄にその旨ご記載いただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
左から、飲み物を港に置き忘れて危うく干からびかけたカメラマンに水分を分け与え、自身も共に干からびかけた(笑)ながさーち編集長と、僕♪
クルーズ船に乗る時も、水分補給は忘れずに!
ここまで読んでいただきありがとうございました!
【撮影:嵩山幸之輔氏】
(てくてく・ながさーち編集長が撮影した写真も使用しています)