こんにちは、メイです!かつて長崎には、ソロバンドックと呼ばれ親しまれていた場所がありました。日本の近代造船所発祥の地であるその場所は、外国船の修理をする曳き揚げ小屋でした。2015年には、「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のひとつに選ばれます。今回は長崎市中心部から、およそ30分もあれば辿り着ける、小菅修船場跡の歴史を振り返っていきますね。
小菅修船場跡の歴史・概要
小菅修船場は、外国船の修理をするためにトーマス・ブレイク・グラバーと、薩摩藩士の小松帯刀や五代才助(友厚)達が計画し共同出資をしたドックです。藩外であった薩摩藩が、どうして長崎に修理場を作ったのかは正確な情報がありません。
ドックはオランダ語に由来していて、建造や修理など、船を処理するための施設や設備の意味があります。
現地ではwi-fiを使って遺産の説明を聞くこともできます。ガイドさんがいないときは、利用してみてください。
明治元年(1869年)に完成したスリップ・ドック
ドックでは修理する船はレール上の滑り台に乗せ、ボイラー型の蒸気機関の力で曳き揚げていました。この装置をスリップ・ドックと呼んでいたのですが、レールの上に置かれた滑り台がそろばん状に見えたため、「ソロバンドック」という通称もありました。
蒸気機関の力を使う装置を設置したのは、日本で初めてでした。装置一式は、グラバーがスコットランドから取り寄せたものです。
なぜ長崎に作られたの?いつまで使われていた?
幕末当時、諸藩は外国系の商社から洋船を購入していました。しかし中古の船が多かったため、故障することもよくあったようです。長崎は貿易港で修船場の需要が多かったので、入り江の地形を利用してドックを建設しました。
このドックは完成した翌年には明治維新政府が買収し、長崎製鉄所が管理しました。そして1887年に三菱の所有となります。その後は日清戦争や日露戦争などが続き、軍艦や船は大型化され、立神造船工場が本格稼働しました。小菅修船場は小型船舶の修理をするようになりましたが、1953年に閉鎖されます。
巨大な歯車が曳き揚げていたのは1000トン級の重量
小屋の外には大きなチェーンがあります。
チェーンを介して、蒸気機関の力で曳き揚げます。
画像引用:機械遺産
曳揚げ小屋の中には、船を曳き揚げていたボイラーや巨大な歯車があります。これらの装置で1000トンまでの船を曳き揚げれるそうです!・・・と言っても、数字が大きすぎてどれくらいか分かりづらいですね^^:
小型の漁船が大体100トンくらいで、1000トンはフェリーレベルのようです。この歯車でフェリーを曳けるんだと思って見たら、とんでもないパワーに思えてきませんか?!
この曳き揚げ小屋は、2015年の11月から土日祝日限定で内部公開されています。地元自治会の方がボランティアで観光案内を行っているそうですよ。せっかく訪れるなら小屋の中も見ていきたいですよね~。
ちなみに小屋の外ですが、曳き揚げ小屋を背中にすると三菱重工業長崎造船所が見えます。
厚さ4センチ?長崎発祥のコンニャク煉瓦とは?
小菅修船場は現存する曳揚げ小屋の中で、日本最古の煉瓦造りの建造物でもあります。使われている煉瓦には、薄く長くて扁平な特長から「コンニャク煉瓦」と呼ばれています。(写真ではちょっと遠くて見づらいですが・・・)
この煉瓦は明治維新前後の短い間に、長崎で生産されていました。生産を指導していたオランダ海軍のハデルスに由来して、ハデルス煉瓦とも言うそうです。
通常の煉瓦は6センチの厚さがあるのに対し、コンニャク煉瓦は4センチしかありません薄く作った理由は諸説ありますが、焼成温度が高くできなかったためと言われています。コンニャク煉瓦は小菅修船場跡の他にも、グラバー園のグラバー邸や大浦天主堂内旧羅典神学校などで使われていますよ。
長崎出島道路(オランダ坂トンネル)出口直下の壁は、コンニャク煉瓦の復刻版が使われています。この煉瓦はよく見ると、等間隔でハデルスの横顔らしきものが刻まれているんです!通る機会がある人は、チェックしてみてくださいね♪150センチよりも低いので、身長が高い人は少し下の方を見ると見つけやすいですよ。
日本最古の蒸気動力を利用したスリップドックであり、日本最古の煉瓦造りの建造物、国の史跡として指定されるのも納得の歴史です。
小菅修船場跡を見るには?アクセス方法は?
JR長崎駅前から
長崎バス(野母半島方面【戸町経由】乗車)約15分、小菅町下車から徒歩5分
バス停から、少し小屋が見えていますね。(写真は長崎駅から向かう場合、赤い丸の中に降りるバス亭があります。)
横断歩道から近くに小菅修船場跡の入り口があります。
※専用の駐車場が無いので、車で行かないように気を付けてください!!
実は軍艦島へのクルーズ船へ乗船すると、小菅修船場跡を見ることもできます。しかしすぐに通り過ぎてしまうようなので、ゆっくり見てみたい人は現地に訪れてみるのがおすすめですよ。
電話:095-829-1314 (長崎市観光推進課)
料金:入場料無料
駐車場:無し