– – – 責任感だった。
「やきそば牛丼」なるものがすき家から発売されるなんて、最初は見向きもしなかった。
しかし、日が経つにつれて、その存在が気になり始める。
「なぜ、わざわざ牛丼に焼きそばを乗せるのか」と。
販売意図を確かめるべく、食べてみることを決意した。これはもはや、自分だけの問題ではない。
多くの人が抱いているであろうこの問題を自分が解決しなければいけない。
責任感が自分を動かせたのであった。
すき家 銅座町店に向かう。~500円と少しの勇気を持って~
やきそば牛丼のことを考えながら浜の町を歩いていると、さっきの決意がブレてきてしまった。
そもそも買う必要があるのか?すき家にはチーズ牛丼やキムチ牛丼という名作が並ぶのに、わざわざ買う意味はあるのか?
さっきの決意はどこに行ってしまったのか。意志薄弱な自分を呪う。
S東美のスターバックス前で信号を待つ。一緒に待つ人たちも僕と同じようにやきそば牛丼を買うのだろうか。しかし、冒頭の問題のせいで買うかどうか悩んでいるのかもしれない。そうか、そうだよな、僕が解決しないとみんなが安心して買えないよな。
弱気になっていた僕の背中をみんなが後押ししてくれるのを感じた。
よし、前に進もう。
横断歩道の白い部分だけを踏んで歩く。
もう怖いものは無い。買うぞ、買ってやるってんだ。
店内に入る。「やきそば牛丼ください。並みで!お、お持ち帰りで!」食い気味に言ってしまった。今の気持ちの表れだろう。
すると、店員さんは「やきそば牛丼」という言葉にピクっと反応したが、すぐさま冷静を装って「少々お待ちください」と言葉を発した。店員さんも「やきそば牛丼」に対して何か思うところがあったのだろう。僕らは無言で意思の疎通をした。
はやる気持ちを押さえて、家路につく。
はあ、はあ…、やった。買ってやったぞ。
家に帰って、袋から牛丼を出してみる。
おお、見た目はドンピシャで想像通りだ。
ふむ、想像通り、これは焼きそばだ。
ソース焼きそばに違いない。これはこれで普通に美味しいだろう。
いや、問題は牛丼になぜ焼きそばを乗せているのかということだ。この問題を解決すべき必要がある。牛肉と白飯と焼きそばを一緒に食べてみなければ。
焼きそばと牛丼を一緒にほおばる。すると、いつも通りのすき家の牛丼の味がして、焼きそばの味がしない。まるで新顔には良い顔をさせない先輩が張り切ってるみたいだ。牛丼が9割、焼きそば1割といったイメージだ。
結局は美味しい。だって、一緒に食べたらほとんど焼きそばの味がしないんだから。
しかし、焼きそばの野菜(キャベツとか)が良いアクセントになって、牛丼にポイントを加味してくれる。美味しいぞ。
持ち帰った紅しょうがと付属の青のりをかけると、さらに美味しくなる。だって、焼きそばの味がかき消されるのだから。むしろ、ごはんと紅しょうがだけでも美味しい。
勢いのまま完食してしまった。美味しかった。責任感で買ったやきそば牛丼が美味しいという結論になるとは思っていなかったため、少し困惑している。
決して不味くはないけれど、できれば焼きそばと牛丼は別々に食べたい。これが今回の僕の結論だ。
あとがき
あと、今回のやきそば牛丼はクレヨンしんちゃんの映画とのタイアップ商品だそうだ。クレしんのおかげで食べることができた。感謝したい。
あと、最後にひとつ。最も驚いたのはクレしんのお父さん「ひろし」が僕と同じ年齢だということ。35歳らしい。昔、見てたアニメのお父さんがもう自分と同じ年齢なのかと思うとちょっと切ない。
まだ食べてない人はぜひ食べてみてほしい。自分の価値観を良い意味で壊す機会であり、物事の本質を見つめ直すきっかけになるかしれない。大丈夫、悩んでいるのは自分ひとりだけじゃないんだから。
※5月中旬に販売を終了する予定とのこと。