長崎の正月の風習として「七高山巡り(しちこうさんめぐり)」というものがあります。金比羅山~七面山~烽火山~秋葉山~豊前坊~彦山~愛宕山という、長崎の山々を縦走していく、約15キロの山行です。
※時期は大体1/2~1/15とされています。
江戸時代から続く登山イベントですが、近年はハイキングとして広まっているようです。めぐる人たちの気持ちはそれぞれ。ちなみに筆者は健康祈願ということでめぐってみました。
それでは「七高山巡り」、いざ出発!
8:40。まずスタート地点は長崎人なら誰でも知っている諏訪神社。「おすわさん」の愛称で親しまれていますよね。一ノ鳥居をくぐってからのスタートです。
鳥居が沢山ありますが、これらにも諸説あって調べると面白いです。お参りして、六角道の登り坂を目指します。
私は長崎東高出身で、このあたりを通学時によく通っていました。登り出すと・・・おや?道路の真ん中に大木がドーン!何本もドーン!!
そう、諏訪神社の御神木がそびえています。長崎でも有名な登り坂です。車の方は衝突しないように注意して運転してくださいね。
9:00、桜で有名な立山公園を通過。今年も立派な桜を咲かせて欲しいですね。公園を登ったところにはいきなり鳥居が立っています。
そう、この鳥居はこれから目指す金比羅神社の鳥居。これをくぐって登山道へ。ちなみに、体力に不安のある方はバスに乗って来ることができます。(「東高下」で下車)
金比羅山を目指します。山の麓の金比羅神社付近には金星観測所があり、歴史的にも意義深い場所です。9:25、神社を過ぎるとハタ揚げで有名なドンク岩の広場に着きます。
高校の頃はトレーニングコースで走って登っていましたね。山頂往復20分以内の人は、速かった部類だと記憶してます。私は20分超えていましたが。。。
そして、ドンクとはカエルのことですが、ひよこの形にも見えるので、皆「ひよこ岩」と言ってましたねぇ。懐かしい思い出に浸りながら山頂を目指します。
金比羅山に到着!
9:25、金比羅山到着。山頂からは長崎港や市内を見下ろす絶景です。登りで火照った体を冬の冷たい風が通り抜けて気持ちがいい。標高366m、天気が良ければ雲仙普賢岳も見えます。
山頂の祠に挨拶してから次の七面山妙高寺を目指します。筆者はドンク岩まで戻りましたが、山頂を通り抜けて室生寺(むろおじ)から下る方が近くて正解です。
せっかく登った金比羅山を背にして七面山に行くんですが、いろんなルートがあるのでよく調べてくださいね~。私は、仏舎利塔から建山経由の七面山行きですが、かなりきつかったです・・・。
ここで誤解のないように説明しますが、「七高山めぐり」とは、山ではなく神社やお寺をめぐります。七面山というのは、山頂ではなく七面山妙光寺のことです。
11:00、登って下って、竹林で滑って転んで。辿り着いた七面山妙光寺。かつてはシーボルトも歩いたという歴史深い階段を登ると奥の院到着。お寺というよりか神社の様相です。初の妙光寺。
こんな山奥に、こんなに立派な石垣に囲まれたお寺があるのかと感動しました。今度は秋の紅葉で行ってみたいですね。ここは水も流れていて、おそらく中島川の源流になる小川が流れています。
お寺の右に脇道がありまして、烽火山へと続く道です。今日一番の急峻な登り。ここはほんとに辛かった。楽に登るには「できるだけ同じペースで」というのが鉄則。やっとの思いで尾根に出ますが、ここからも烽火山への険しい登り。岩がゴツゴツしてますので注意してください。
こんな足場の悪いところを江戸時代の先人たちは草鞋(わらじ)で登っていたんでしょうから、頭が上がりません。こちとら新調したトレッキングシューズで登ってます。
烽火山(ほうかざん)山頂!
11:30、烽火山山頂に到着。山頂には名前の由来でもある県指定史跡の「かま跡」があります。このかまは、江戸時代、外国船が長崎港に来港した際、狼煙(のろし)を上げて近国へ知らせていたもので、立派な石組みのかまです。
標高426m、七高山めぐりでは一番高い山になりますが、眺望は長崎港方面だけです。一服してから下山開始です。
次は秋葉山大権現を目指します。烽火山からの下り道は数カ所あるので地図できちんと確認してくださいね。間違えると違う場所に出てしまいます。登った分だけ下りもあります。急な下りですのでゆっくり下山しましょう。
私のオススメは「横向き下り」です。横向きだと滑っても尻もちをつくことなくリカバリーできます。皆さんいろいろ試してください。
秋葉山を通過!
11:50、ふと現れた秋葉山大権現。妙光寺と同様、こんなところに神社があるなんて今までつゆ知らず。
歩いてきた秋葉山大権現の右手の道には「七高山道」という石碑がありますので探してみてくださいね。ここも水が豊富に流れており、長崎の街へと注ぎ込んでいるようです。
12:05、秋葉山を通過してしばらくすると、石の山門が特徴的な妙相寺の裏手に出ます。
ここも紅葉の木々が沢山ありますので、紅葉の頃に訪ねてみたいものです。
さて、妙相寺で掃除をしているおじいさんから声をかけられました。
おじいさん「わっかもん、山歩きね?焦らんでゆっくりいかんね。」
私「今日は朝早う家ば出たけん大丈夫ばい。」
おじいさん「苦しいことは脳裏がしっかり覚えとる。わしは今まで生きてきて苦しいことばっかりよう覚えとる。けれど、それのあるけん今もやれとる。今は笑い話たい。今日沢山歩いて苦しかったことも、苦しい記憶として記憶に刻まれて、それを懐かしむ時がくる。体を大事にしてゆっくり行かんねよ。」
83歳のおじいさんの気持ちのこもった言葉。疲れが一気に吹っ飛んだ。筆者、まだまだ30代。苦しいことも楽しいこともこれから沢山やっていこう。