みなさんは40年前の長崎大水害で、どれほどの被害が出たのかご存知でしょうか?
どうして多くの被害を出してしまったのか、そして今後水害が起きてしまったらどのような対策をしたらよいのか、などについて考えていきましょう。
40年前の長崎大水害の概要
長崎大水害は1982年昭和57年7月23日に発生。この日は南部に停滞した梅雨前線により、夕方から集中豪雨に遭いました。
翌日の24日までに総雨量は572㎜を記録。長与町役場では1時間で187㎜という凄まじい降水量を記録しました。これは国内の観測史上で最大の記録で、2022年現在でも超えられていません。(千葉県と同位)
気象庁で発表されている最大1時間降水量のランキングでは、2015年に雲仙岳で記録された134.5mmも20位に入っています。※2016年には「50年に一度の記録的な大雨」と表される豪雨がありました。
また、2020年には五島市で1時間に約110mmを記録する大雨が降り、「記録的短時間大雨情報」が発表。これは、災害が発生するかもしれない数年に1度しか観測されないほどの大雨が短時間で降っていることを表しています。
雲仙岳も五島市もどちらも1時間に100mm以上を観測していますが、長崎大水害時の153mmには及びません。長崎大水害当時の雨量が、どれほど激しかったのか分かる記録ですね。
長崎大水害で被害が拡大していった5つの原因
- 7月20日までに大雨があり、すでに地盤が緩んでいた。
- がけ崩れ、土石流、河川の氾濫が同時に起こった。
- 当日は5回目の警報で、連日続く警報に慣れた市民の警戒心は薄くなっていた。
- 道路の寸断によりライフラインが途切れ、電話は繋がらず、テレビからも情報を得られなかった。
- 情報の伝達不足。消防車やパトカーが洪水により動けなかったので、避難勧告が市民に伝わらなかった。
電話なども繋がらず、何も知らないまま自宅などにいたなんて、とても怖いですね。
当日、避難をしていたのは全体の27.3%ほどでした。警報は5回目でしたが、それまで大きな被害がなかったために、特別な警戒をしていなかったのでしょう。
何度も警報を聞いていたので、すっかり慣れてしまったんですね。前も大丈夫だったからといって、次も何も起こらないとは限りません。警報には毎回注意をすることが大切です。
また、警報も深刻さを表す特別な発信をしておらず、情報を伝える側、そして受け取る側にも問題がありました。このため被害は拡大していったのです。
長崎大水害の被害は8割が土砂災害
画像引用:国土交通省 九州地方整備局
- 死者・行方不明299名(87.6%は土砂災害による被害)
- 住宅被害39,755戸
- がけ崩れ4,306ヶ所
- 地すべり151ヶ所
長崎大水害は、水害よりも土砂災害で犠牲になった人のほうが多いということはご存じでしたか?
死者・行方不明者が299名もおり、その8割は土砂災害で亡くなっています。情報が伝わらず、斜面地の多い長崎では、家にいたまま被害を受けた人が多かったのです。
これは被害が広がった原因にもある、情報の伝達不足、警戒心の薄さから非難をしていた人が少なかったためです。
河川の氾濫により死亡したのは30数名で、この中の40%が移動中の車の中でした。これは帰宅する時間帯と重なっていたことから、強引に家に帰ろうとしていたのではないかと考えられます。
長崎大水害の当時の水位は170センチを超える場所も
多くの犠牲を出した長崎大水害のことを伝え続けるために、石碑を建てたり、どのくらい水位が上がってきたか示す目印などが存在します。
中島川 約160cm以上
上の写真は中島川の近くにあるマンションと、当時の水位です。約160センチあります。人の身長くらいの所まで水位が到達していたんですね。とても恐ろしいです。
河川の氾濫により、眼鏡橋は一部流出するなど国の重要文化財も被災しました。中島側の周辺にある11つの橋の内、6つの橋に被害が及んだのです。
中島川にある写真の石碑は、中国で制作された水害復興記念碑です。治水と日中の友好を表しています。
長崎市内には、他にも到達した最高水位を表している場所があります。思案橋電停の近くの歩道は157センチ、浜の町アーケードの中の観光通りの交差点の鉄柱には173センチ、中央橋交差点では氾濫した水位の高さは150センチ以上。
中央橋交差点 約150㎝以上
思案橋電停近く 157cm
どのくらいの水位があったのか、実際にその場所に立ってみると今でも恐ろしく感じます。市内の中心部にあるので、目印とあなたの身長と比べてみてくださいね。
長崎市の災害ハザードマップはこちらから
インターネットから、土砂災害や洪水情報マップが見れるようになっています。長崎大水害では、中島川と浦上川に大きな被害がありました。今後も1時間に127mmほどの大雨があった場合は、土砂災害や洪水に気をつけましょう。
■土砂災害ハザードマップ地区別検索表
https://www.city.nagasaki.lg.jp/bousai/210002/p025551.html
■河川洪水情報マップ(中島川・浦上川情報)
https://www.city.nagasaki.lg.jp/bousai/210002/p004103.html
■避難所情報
https://www.city.nagasaki.lg.jp/bousai/210003/p031834.html
危険や不安を感じる場合は、早めに避難をしておきましょう。
水害が起きてしまったら気を付ける5つのこと
①警報などを軽視しない
初めのうちは警戒していても、人間は慣れてしまいます。まずは普段から避難所の確認をしておき、速やかに非難ができるようにしておきましょう。
②水害時に自動車での移動は危険
自動車のドアは、水圧によって簡単に開かなくなります。また、電気系統の故障により、窓を開けることも困難です。窓を割ってしまわないと、脱出ができないでしょう。車での移動は大変危険だと把握しておいてくださいね。
③浸水しているときは、地面を探りながら進む
傘や棒など、何か地面を探れるような物を使って歩きましょう。地面の様子が分からないので、急に蓋の外れたマンホールや溝などに転落しないよう注意が必要です。
④洪水の中を無理して歩かない
腰までの水深があるときには、その中を無理して歩かないようにしてください。思っているよりも水が流れる力は強いです。
⑤地下に逃げ込まない
地下に入ってしまうと、外の様子は分からなくなってしまいますし、浸水してしまうと大変危険です。エレベータが使えなくなったり、ドアが水圧で開けられなくなると、地下から逃げることができなくなります。
普段から災害に備えておく!大切な4つのこと
①避難経路の事前確認をする
②貴重品・食料などを用意しておく
③災害情報に注意しておく
④災害が起きたら身軽な格好で、必要以上の荷物は持たない
水害だけではなく、私達はいつどんな災害に遭うのか誰も分かりません。避難経路を事前に確認をしておき、すぐに非難ができるよう貴重品や食料など、必要最小限のものを普段から用意しておきましょう。
そして災害情報を把握するために、防災無線やラジオ、携帯などからの情報に注意が必要です。避難をするときには、身軽な格好で必要以上の荷物は持たないようにもしてくださいね。
長崎大水害を教訓に、二度と同じような被害を受けないようにしましょう!災害時は周りの人と声をかけあい、協力することも大切です。
コメント
私の15歳の誕生日でした。近所では30人の犠牲者がありました。もう35年も経つんですね。
今年も豪雨による被害が全国的に起こってますが、そのニュース映像を見るたびに長崎大水害のことを思い出します。
元筒水平の方の投稿にもありますように、長崎では土砂災害による犠牲者が多かったですね。
長崎には、筒水平のある川平地区のように、赤水平という地名もあり、また矢の平というような「平」が地名につく
ところが多々あります。また、鳴滝(なるたき)のように「滝」の地名のつくところもあります。
これは、鉄砲水や土砂崩れが過去にあった記憶を、この「平」とか「滝」のつく地名に託して、先人が残した警鐘のメッセージですので、決して忘れないようにしたいと思います。
今回の西日本の豪雨災害の後にこの記事を読んで…活かされていない教訓、すごく残念に思います。こんなに素晴らしい記事があったのに…災害や事故は、いざ自分が当事者にならないとどうしても他人事、確証バイアスでしたか、自分は大丈夫という気持ちを捨てられないものですね。亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。